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ぶどうの森・本店
9月の秋冬野菜の種まき体験を終えて考える、未来へつなぐ食の豊かさ。[グランドメゾン2022・40周年特別号コラム]
2022.10.10
「土、ぬるぬるしてる…」
前日に降った雨でぬかるむ畑に、舗装された道を歩きなれた小さな子どもから戸惑いの声が漏れます。
からりと晴れたある秋の朝、ぶどうの森農園のラシェットエリアでは、大根とかぶの種まき体験が行われました。
参加してくれたのは、小さなお子さんから大人の方まで約20人。農園スタッフの説明を聞いた後、それぞれ好みの品種を選んで種まきに挑戦してもらいました。
以前このエリアは多くの米を産出する豊かな水田地帯でした。しかし、今ではそのほとんどが耕作放棄地となり、ぽつりぽつりと増え続けているのが実情です。
ぶどうの森では、里を守るために、地域のご理解とご協力をいただいて、このエリアにお皿のような丸い農園(ラシェット)を作って運営しています。
しかし水田から畑への転用はそう簡単にはいかず、収穫量はまだわずか。それでも最近は散策してくださる方も増え、このような活動を通して新しい賑わいも少しずつ生まれています。
地域から世界へ目を移せば、食糧問題は増え続ける人口、紛争や気候変動なども相まってさらに深刻になっています。
そんな中で日本の食料自給率は37%。そこへ農業離れやフードロス、国の経済力の低下などの多くの課題を抱え、私たちの未来の食はまさに危機に瀕しています。
さまざまな対策はありますが、わたしたちが身近にできることのひとつは、もっと食材そのものに触れることではないでしょうか。
つまり、肉、魚、野菜、果物、それらを育む自然に触れること。そのためには土にもっと触れることにも答えがある気がするのです。
この日からおよそ2か月後の11月中旬。参加者の方々には再びご来場いただき、ご自分で播いた種から育った根菜たちを収穫してもらう予定です。
きっと彼らは、食材でなく植物としての大根やかぶに流れた時間と成長を目の当たりにするでしょう。そしてこのような、命にふれる感動と経験こそが、豊かさにつながっていくのだと思うのです。
父祖たちが心血を注ぎ、豊かさを築いたこの地だからこそ、私たちは新しい形で未来の食の豊かさを防ぐことができる、そう信じています。