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ぶどうの森・本店
森をつくるものたち。[グランドメゾン2023・40周年特別号-4コラム]
2023.06.10
農家は、自分たちの水田にそれぞれ呼び名(呼称)をつけて識別してきました。
山奥にあれば「ヤマダ」、斜面に階段状に作った田なら「タナダ」など。
地形や地質に由来する名もあれば、歴史や所有者に由来する名もあり、集落全体で共有する名もあれば、家族単位でだけ使う名もあります。
豊かな水田が広がっていたぶどうの森・本店周辺の土地にも当然、それぞれに名があります。粘土質の「ネバダ」、変な地形の「ヘンジ(ヂ?)」、「カミシモ」、「フルバタケ」、「スナバ」など。
その土地の現状から、謂れが自然と思われるものがほとんどですが「ビョウブダ」など由来不明の水田もあります。
「オツボ」と呼ばれた土地からは先日遺跡が出土して驚きましたが、父祖たちはその事実を知っていたのでしょう。いずれにしても、水田と人の結びつきがいかに強かったかを伺い知ることができます。
その中でヤチと呼ばれるエリアは、ラシェット※から東へ伸びる山のなだらかな斜面で、山あいの「谷の地(内)」がその名の由来であることは想像に難しくありません。(ラシェットの詳細はこちらから)
ここは約1ヘクタールにわたって美しい水田が棚田状に連なり土地を彩ってきました。しかし、約15年前に人の手が入らなくなると途端に荒れ果て、ここ10年は猪をはじめとする獣たちの領域となっていました。里と山のいびつな境界線が身近にある現実にぶどうの森も直面してきました。
そこで昨年立ち上がったのが「バラの谷」プロジェクト、この地を再び里へよみがえらせる計画です。
香りのよいことで知られるブルガリア産ダマスクローズの苗を植えて栽培し、その花弁から抽出する香りを飲料に活用するなど新しい経済活動につなげていこうとするものです。
2023年4月、背丈を超える雑草に覆われていたヤチは切り開かれ、久しぶりに土の上に太陽の光が降り注ぎました。時代の中で曖昧になった山と里の境界を再び整え、そこから新しい経済活動を生んでゆく。
そうして新しい循環を育んでいくことが、今日の森をつくることのような気がしています。
ぶどうの森は40周年を迎えました。そして地域とともに森を作る活動は今、始まったばかりです。